2024.08.21 07:27『奴隷の島』リーディング用演出例付き台本ここに紹介するのは、ゼミの学生たちとせんがわ劇場(@調布)でリーディング公演をした時の台本です。『奴隷の島』はマリヴォー劇の最高傑作の一つで、当時パリで活動していたイタリア人劇団によって演じられました。イタリア人劇団の演劇スタイルは、いわゆるコメディアデラルテをそもそものベースとしたもの。フランス人劇団(コメディー・フランセーズ)の朗読劇的スタイルとは正反対の、動きに充ちた即興性の強いもので、『奴隷の島』もそういうイタリア人劇団のスタイルに合わせて書かれています。従って、これをリーディング台本とするにはそれなりの工夫が必要となります。ここでは、演者たちが互いにシンクロするような形で舞台を移動するように演出してあります。何もない舞台上をタイミングよく動き...
2024.08.20 08:05『恋のサプライズ2』リーディング用演出例付き台本ここに紹介するのは、私のゼミの学生たちがせんがわ劇場(@調布)で『恋のサプライズ2』を上演した際の公演台本です。『恋のサプライズ2』は三幕の喜劇なので、そのままではゼミ公演には長すぎる。そこで第二幕だけを取り上げ、第一幕の抜粋とレジュメを前に付けました。その時の演出もト書きとして入れてあるので、そのままリーディング公演用台本として使えます。ストーリー的には、侯爵夫人とシュヴァリエという主人公二人の恋のなれ初めから恋の成就までの話。これを劇構成的に見ると、第一幕で生まれた恋が、第二幕でこじれるけれどもやがて誤解が解けて仲直りする・・・のだけれども、それで終わりではなくて、第三幕でまたこじれて、しかし、最後にはやっぱりすべて解決してハッピーエンド・・・とい...
2022.02.05 00:17『コロニー』リーディング用演出例付き台本ここに紹介するのは、ゼミの学生たちとリーディング公演をした時の台本です。じっと動かずにリーディングをするのではやはりイメージが膨らみにくい。台本は手に持ったまま少し動きを付けて、演じる方にも見る観客にも面白い芝居にしようという試みです。演出を付けることで、笑わせるポイントなどもつかみやすいのではないかと思います。リーディングの参考にしてみてください。(ゼミ公演の現実に合わせてエキストラ役を少し整理しました。)ジェンダー不平等のテーマにダイレクトにアプローチした傑作喜劇ですが、劇の終わり方にはちょっと物足りなさを覚える人もいるかもしれません。けれど、日本社会の実情からするとむしろリアルな展開だという見方もできるでしょう。ジェンダー平等を実現するための議論...
2022.02.01 05:35マリヴォー『愛の勝利』三幕の喜劇 解説と翻訳台本『愛の勝利』は三幕の喜劇。 その面白さは、なんといっても、主役の女優が男装で“男役”をすること。 “男役”といっても、宝塚的な男役ではなく、登場人物的には女の役。女子が、恋する男子に近 づくため、事情があって男子の振りをするしかない。うまく男子として立ち回れるのか、変装は 見破られないのか、いつ女子であるとカミングアウトするのか(それやらないと恋の成就がな い)・・・そのあたりが、このお芝居の尽きせぬ魅力です。 男と女という性別二元論的秩序を壊そうとするものではありません。主人公はトランスジェンダ ーではないのです。ですが、そこに出現するのは明らかにジェンダーをやすやすとトランスする 主人公であり、“彼女”は、ある時は男子として、ある時は女子...
2022.01.25 06:12マリヴォー『恋のサプライズ2』三幕の喜劇 解説と翻訳台本『恋のサプライズ2』は1727年に初演されたマリヴォーの3幕喜劇です。『恋の サプライズ2』となっているのは、この前に『恋のサプライズ』というのがすでにあ って、そのセカンド・バージョンという意味です。タイトルの「恋のサプライズ」は 原文では la Surprise de l’amour で、「恋の不意打ち」と訳されてもいます が、フランス古典劇の「現代語訳」を試みる mikispace としては、あえ て「サプライズ」という言葉で「不意打ち」を狙いました。 さて『恋のサプライズ2』のお話は・・・ 侯爵夫人は最愛の夫を喪ったばかり。シュヴァリエも愛する人を失ったところ。二人 と...
2022.01.24 12:33マリヴォー『奴隷の島』一幕の喜劇 解説と翻訳台本マリヴォーは18世紀フランスの喜劇作家です。小説家でもあります。 1688年に生まれていますから、正確には、17世紀に生まれ、12歳のときに新 世紀をむかえた人、という計算になりますが、まあ、18世紀前半の作家と考えれば、 とりあえずは整理しやすいでしょうか・・・亡くなったのは1763年です。 マリヴォーの『奴隷の島』は一幕ものの喜劇です。 アテネの青年貴族イフィクラテスとその奴隷(従僕)アルレッキーノは、船旅の途中 で嵐に遭遇し、ある島に漂着します。その島の名は「奴隷の島」。かつてアテネの奴 隷だった者たちが反乱を起こし、アテネを逃れてたどり着いたのがこの島。彼らはこ こに新しい国をつくったのですが、この国のルールがちょっと変わっている。島...
2022.01.24 08:08マリヴォー『コロニー』一幕の喜劇 解説と翻訳台本『コロニー』は短い一幕の喜劇です。『奴隷の島』と同じく「島もの」ですが、「女 たちの反乱」というテーマが微妙に「現代的」で、芝居の作りも、シンプルかつスト レート。いますぐさらっと舞台にかけて、けっこう受けるような気がします。 話はというと・・・ 時は現代(マリヴォーの時代)、ある国の住民(フランス人?)が、外国の侵略を受 け、祖国を捨てて逃げ出します。逃げた先は広大な海洋。船を連ねて、新しい土地を 目指しました。18世紀といえば、フランスとイギリスが植民地でしのぎを削ってい た時代。芝居のタイトル「コロニー」は、もちろん、植民地とか入植地という意味の コロニーです。やがて、彼らはある島にたどり着き、そこで新しい国づくりを始めま す。ところが・・・ そ...