『コロニー』は短い一幕の喜劇です。『奴隷の島』と同じく「島もの」ですが、「女 たちの反乱」というテーマが微妙に「現代的」で、芝居の作りも、シンプルかつスト レート。いますぐさらっと舞台にかけて、けっこう受けるような気がします。 話はというと・・・ 時は現代(マリヴォーの時代)、ある国の住民(フランス人?)が、外国の侵略を受 け、祖国を捨てて逃げ出します。逃げた先は広大な海洋。船を連ねて、新しい土地を 目指しました。18世紀といえば、フランスとイギリスが植民地でしのぎを削ってい た時代。芝居のタイトル「コロニー」は、もちろん、植民地とか入植地という意味の コロニーです。やがて、彼らはある島にたどり着き、そこで新しい国づくりを始めま す。ところが・・・ そもそも、祖国を捨てなければいけなくなった原因は、無能な政府にお粗末な法律。 すべて男たちがつくったもの・・・と、女たちは言います。男たちは、このような事 態になってもまだ、女性の意見を聞こうとせず、またも、自分たちだけで新しい国を つくろうとしている。女性たちよ立ち上がれ、女性たちの手で法律をつくり、女性た ちの手で国をつくろう・・・
この芝居には二つのバージョンがあります。第一は1729年に初演されたもので、
三幕の長いもの。なぜか非常に評判が悪く、マリヴォーは一日上演しただけで、この
芝居を引っ込めてしまいます。今日では台本も残っておらず、芝居の初日を見た人の
書きとめた「あらすじ」があるだけです。
第二は1750年に発表された一幕の短縮バージョン。ここに訳したものがそれです。
1729版の「あらすじ」から判断すると、長さだけではなく、話の展開やキャラク
ターにもかなりな変更が見られるようです。第二バージョン、つまりここに訳した『コ
ロニー』は、マリヴォーの生前にはプロの劇団によって演じられたことは一度もあり
ませんでしたが、20世紀後半を過ぎてからよく上演されるようになりました。
古代ギリシャの喜劇作家にアリストファネスという人がいて、『女の議会』とか『女
の平和』という作品を書いています。マリヴォーはこれらの作品からインスピレーシ
ョンを得ていますが、アリストファネスの、ああいう下ネタ・オン・パレードみたい
なことは、マリヴォーの場合はぜんぜんなくて、演じる方も観る方も安心して(?)
いられるでしょう。
翻訳台本のPDFファイルが以下のリンクから見られます
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