マリヴォー『恋のサプライズ2』三幕の喜劇 解説と翻訳台本

『恋のサプライズ2』は1727年に初演されたマリヴォーの3幕喜劇です。『恋の サプライズ2』となっているのは、この前に『恋のサプライズ』というのがすでにあ って、そのセカンド・バージョンという意味です。タイトルの「恋のサプライズ」は 原文では  la Surprise de l’amour  で、「恋の不意打ち」と訳されてもいます が、フランス古典劇の「現代語訳」を試みる mikispace としては、あえ て「サプライズ」という言葉で「不意打ち」を狙いました。 

 さて『恋のサプライズ2』のお話は・・・ 侯爵夫人は最愛の夫を喪ったばかり。シュヴァリエも愛する人を失ったところ。二人 とも、二度と人を愛したりしないと決めています。これからは、失った愛の悲しみと ともに生きるだけ・・・といっても、二人はまだ若い。年齢は書いていませんが、ま あ、20代でしょうか。 彼らの家は隣り合っていて、間に庭があります。庭に出てくると自然に顔を合わすよ うな空間構造。悲しみを語り合ううちに、私の悲しみをわかってくれるのはこの人だ け、と互いに思うようになり・・・二人はお互いを深く理解し合う大切な“友人同士”になる・・・はずなのですが・・・

 侯爵夫人の小間使いのリゼットと、シュヴァリエの従僕リュバンも、どうやら互いに 好意を持った様子。彼らの場合は、恋愛感情を友情と取り違えたりはしません。主人 たちが、愛情と友情の間で道を誤れば、自分たちの恋の成就も危ぶまれる・・・ 情熱に背を向け理性に生きよと説く、侯爵夫人の家庭教師オルタンシウス先生と、さ らに、侯爵夫人に「横恋慕」する伯爵が加わって、もつれた糸はなかなか解けません。 


友情だとばかり思っていたあの人への気持ちが、気がつくと恋愛感情だった、という サプライズ・・・友情と愛情の間で言葉が揺れ、理性と欲望の間で心が揺れ、言葉が 心と裏腹に微妙な嘘をつきつづける。嘘をついていることに本人も気がつかない。気 づいても、認めようとしない・・・ 非常にすぐれたテクストなので、これを現代日本語に訳すことで、ワークショップや 演劇部の「練習」などにも利用できるのではないかと思います。もちろん芝居として も面白いのですが、「教材」としても使えそうという、ひと粒で二度美味しい・・・ 高校・中学の演劇部のみなさん、ぜひワークショップ的に利用してください。 また、翻訳テクストについて疑問・質問などありましたら、お気軽に mikispace までおたずねください。 

ファースト・バージョン『恋のサプライズ』の方は、『恋のサプライズ2』の5年前、 1722年の初演です。二つのバージョンは同じアイデアからつくられているとは言 えそうですが、演劇のあり方みたいなものがぜんぜん違います。『恋のサプライズ』 はイタリア人劇団のために書かれた芝居。一方、『恋のサプライズ2』はフランス人 劇団のために書かれた芝居です。 イタリア人劇団のために書かれた『恋のサプライズ』は、コメディア・デ・ラルテ的 な身体の動き・身振り・身のこなし・即興性・ギャグ的要素などをその演劇のベース としているのに対し、『恋のサプライズ2』は、それに比べると台詞劇として演じる ことができるので、リーディング形式の公演には向いているかもしれません。 『恋のサプライズ2』は、いま、リュック・ボンディの演出したものがフランスのDVDで手に入ります。フランスのものなので日本語字幕はついていないのですが、す ばらしい演出なので、ぜひお薦めです。タイトルは“2”の部分がフランス語の“セ カンド”になっていますので、« La Seconde surprise de l’amour » です。Ruc Bondy の演出。Collection COPAT というところから出ています。


第一幕の翻訳台本のPDFファイルが以下のリンクから見られます 

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第二幕の翻訳台本のPDFファイルは以下のリンクから見られます

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第三幕の翻訳台本のPDFファイルは以下のリンクから見られます

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